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一人は髪を茶色に染め、涼しそうな柄のアロハシャツをはおった、野性的な匂いの漂う男で、もう一人はごく普通のスーツを着た、いかにもサラリーマン的ないでたちの、うだつの上がらなそうな感じの男だった。 一見住む世界が違うように見える二人だったが、親しそうに何かの話をしながらカウンターの後ろの、空いていたボックスへそのまますべり込んできた。 「何にしますぅ?」 「とりあえず、二人ともビールで」 マスターの問いに野性的な方の男が軽く答えると、また二人で話し出す。 二人が着席する前に、すでに亜紗子の、音程が外れ気味の熱唱が始まっていたが、まるで気にも止めていない様子だった。 (あら、見かけない人たちね。でも、あっちの彼、けっこういい男、じゃない……) 真由子が、野性的な方を見て、思う。 (でも、もう一人の方も、初々しい感じがして、なんかカワイイ……) 悪いクセが、始まった。 若い男に目がないのだ。 何せ6つも年下の男と結婚するくらい、真由子は、程よく若い男が好きだった。 結婚までにも何人かの男と付き合ってきたが、みな真由子より、年下だ。 中には、まだ大学に在学中という者までいた。 (話して、みようかなあ……) 酔いも手伝って、つい心が、動き出す。 夫の事などすっかり、忘れてしまっていた。 思わず身を、乗り出し掛ける。 「ちょっとぉー、私のこと無視しないでよー」 そんな真由子を見透かしたように、亜紗子がマイク越しに、いきなり怒鳴った。 まだ歌の途中だった。 「若い男が来たからって、そっちにばっか目がいってたんでしょー」 「ちょ、ちょっとぉ。何言ってんのよぉ」 「わかってんだから。あんた、若い男に弱いもんねー」 「恥ずかしいから大声で言わないでよお」 真由子が思わず、酔った顔をさらに赤くした。 長い付き合いの二人だ。 当然亜紗子は、真由子の性癖を知っている。 (せっかく、お近づきになろうかなって思ったのに、亜紗子のバカ……) 「人が気持ちよく歌ってるんだからさあ、ちょっとは気を効かせてよねえ」 言いたい放題に怒鳴り終わると、亜紗子はまた、調子外れの歌に戻った。 (ムカツクぅ! せっかく人が、我慢してあんたに付き合ってやってるってのに……) 真由子が思わず、亜紗子に怒りを覚える。 (アッタマきた! もう帰ってやる!) 素早く、傍らに置いてあったバッグを持ち出すと、家に向かう用意にとりかかった。 「どうぞぉ」 マスターが、若い二人にビールを注ぐ。 真由子が一瞬、マスターの声に気を取られた瞬間、タイミングよく、 「ねー、よかったらお姉さんたち、一緒に飲まない?」 職務に徹するマスターの肩越しに、野性的な方の男が真由子達へ声を掛けた。 爽やかな笑顔が、真由子の心に、響く。 「……えっ? ……」 嬉しさと戸惑いが、言葉になって現れる。 行きたいのはやまやまだった。 (亜紗子、なんて言うだろ……) 真由子と違い、亜紗子は、とくに若い男に興味がある方ではなかった。 どちらかと言えば、けっこう、夫一筋的なところがあった。 (ああ見えて、結構カタいからなあ……) 真由子が、揺れた。 |