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もちろん亜紗子も結婚後、夫以外の男に誘われなかったわけではなかった。 だが、根が真面目な彼女は、夫に申し訳ないと、その誘いをことごとく振り切っていたのだった。 しかし今夜は、状況が違う。 亜紗子が操を立てるべき夫に、浮気の疑いがあるのだ。 もしかしたら亜紗子も、今夜は乗ってくるかもしれない。 「えー、いいのぉ?」 真由子が彼らに、笑顔を向ける。 「キレイなおねーさんたちにいてもらった方がさあ、ビールうまいしー」 「まーた、上手いこと言うなあ。じゃあ……」 真由子が亜紗子の方をちらっと見る。 歌ももうじき終わる頃だ。 「ちょっと、待っててねえ」 真由子は陽気な様子の彼らにそう言うと、亜紗子の方へ歩いて行った。 「どーもー」 歌が終わり、亜紗子がマイクでアイサツしている。 歌い終わったせいか、表情が晴々としていた。 「ねえ亜紗子ぉ、あそこの彼が一緒に飲みたいっていうんだけど、どう?」 上機嫌の亜紗子を狙うように、間をとって真由子が誘った。 「えー、もっと歌いたいー」 「いいじゃん。とりあえずあそこに行ってからまたカラオケ頼めばー」 「でもぉ……」 「亜紗子だってさ、たまには旦那さん以外の人と話するのもいいかもよぉ」 「あたし、そんな軽くないわよぉ」 「旦那さんだって遊んでるんでしょう。あなただって、たまにはいいんじゃないのぉ」 真由子が、亜紗子の弱いところを突く。 「うーん……」 迷っている。 亜紗子が顔を上に向けて、視線を宙に漂わせだした。 「どーしよっかなあ……」 (このままじゃラチあかないから、強引に連れて行っちゃえ) 真由子が、迷っている亜紗子の隙を見て、おもむろに腕をつかんだ。 「さっ、行こうよぉ」 「ちょ、ちょっとお……」 真由子がそのまま、力で、待ち人たちの座るボックスへと向かった。 「おねーさん、こっちこっち」 野性的な方が、手招きしながら再び笑顔を真由子たちに向けた。 よく焼けた肌に白い歯が、こぼれるように映えている。 爽やかな笑顔だ。 思わず真由子の顔が、緩む。 「もー、真由子ったらしょうがないなあ」 勧められるままボックスシートに座ると、亜紗子がぼやく。 「まあいーじゃないのぉ。ね、おにいさんたちはこの辺なのぉ?」 少ししかめっ面の亜紗子を軽くいなし、真由子が若い二人に話しかけた。 「俺はこの辺。でも、こいつは違うよ。今日俺が呼んだんだ」 野性的な方が、うだつの上がらない方を指差しながら言った。 「あ、俺、野村っていいます。で、こいつが吉岡。」 思い出したように、彼が名乗る。 野村の右に座っている、吉岡と言われた彼がそれに合わせて、 「どうも……」 ペコリと、頭を下げた。 「野村さんと吉岡さんね。私、真由子。で、隣が亜紗子」 左の亜紗子を手のひらで指しながら、真由子がお返しに名乗った。 |
第5回目に続く